WINE REVIEW
そのワイン、薄いんじゃなくて「酸」が足りないのかも
安いワインを飲んで物足りないと感じるとき、原因の多くは酸の不足です。酸が果たしている3つの役割と、実際に★3をつけた2本の例、そして足りない酸を料理側から補う方法を、ワインのタイプ別の早見表とあわせて解説します。
安いワインを飲んで、こう思ったことはありませんか。
「まずくはない。でも、何か物足りない」
香りは悪くない。果実の味もある。それなのに、飲み進めるうちに飽きてくる。
当ブログでは毎日1,000円台のワインを飲んでいますが、この感覚の原因は、たいてい同じところにあります。
酸です。
「薄い」と「酸が足りない」は別のこと
物足りないと感じたとき、多くの方は「味が薄いのかな」「安いからこんなものか」と考えると思います。
でも、実際に飲んで書き続けてみると、果実味そのものは1,000円台でも十分に出ていることがほとんどです。ぶどうの味はちゃんとある。香りも立っている。
足りていないのは、その味を締める側でした。
酸は、3つの仕事をしています

ワインの酸味は、ただ「すっぱさ」を担当しているわけではありません。
1. 味に輪郭をつくる
酸があると、味の形がはっきりします。ないと、ぼんやり平らな味になります。
よく「ジュースみたい」と言われるワインは、甘いからではなく、この輪郭がないことが原因です。
2. 後味を切る
飲み込んだあと、口の中をすっと切ってくれるのが酸です。
これがないと、甘さやコクが口に残り続けます。残ったまま次の一口を飲むので、味が重なって飽きます。
3. 料理の脂を流す
食事と合わせたときに効いてくるのがこれです。
揚げものや肉料理の脂を、酸が洗い流してくれます。ないと、一口ごとに口が重くなっていきます。
この3つが効かなくなるので、2杯目で飽きるのです。
実際に★3をつけた、2本の例
抽象的な話に聞こえるかもしれないので、当ブログで実際に評価を下げた2本を挙げます。
チリの赤(約900円)
カシスと黒胡椒の香りは個性的で、果実味もしっかりありました。それなのに、アルコールだけが浮いて感じられました。
度数を確認したら13%。チリの赤としては高くありません。支える酸がないぶん、アルコールが裸で立ってしまっていたわけです。
ドイツの白(1,200円)
こちらは中甘口で、青リンゴと白桃の甘みはきれいでした。ただ、その甘さを受け止める酸がなく、後味がもったり残りました。
甘いこと自体は仕様であって欠点ではありません。惜しかったのは、支える側でした。
産地も色も価格帯も違う2本ですが、引っかかった理由は同じでした。
逆に、いちばん安かった1本が★4だった話
ここが大事なところです。
当ブログで最近いちばん安かったのは、カザル・ダ・セアラ ヴィーニョ・ヴェルデの700円でした。
アルコールは10%、味わいも決して濃くありません。それでも評価は**★4**です。
理由は、酸がきれいだったからです。きれいな酸とわずかな泡が味を引き締めていたので、薄いとも水っぽいとも感じませんでした。
つまり、こういうことです。
- 700円でも、酸があれば満足できる
- 1,200円でも、酸がなければ物足りない
値段ではありませんでした。 果実味や香りは1,000円台でも十分に出ますが、酸の設計にはお金と手間がかかるのだと思います。
足りない酸は、料理で足せます

ここからが実用的な話です。
ワインに酸が足りないなら、料理の側から持ち込めばいいのです。
レモンを絞る。ポン酢をかける。トマトを使う。それだけで、ワインの味に輪郭が戻ります。
口の中で何が起きているのか
面白いのは、混ざったあとです。
ワインの甘みや果実味と、料理の酸が口の中で合わさると、ワインが飲みものではなく、調味料の側に回ります。
バニー リースリングのときは、これがはっきり分かりました。すだちポン酢をかけた豚しゃぶと一緒に飲むと、ワインの甘みが**「すだちポン酢に青リンゴをすりおろして加えた和風ドレッシング」**のような味に変わったのです。
単体では物足りなかったものが、皿と組んではじめて完成する。そういうことが実際に起きます。
保存版・酸の足しかた早見表

| ワインのタイプ | 足すもの |
|---|---|
| 甘口の白 | ポン酢、すだち |
| 軽い白 | レモン、かぼす |
| 重ための白 | レモン+オリーブオイル |
| 軽い赤 | トマト |
| 重い赤 | バルサミコ酢 |
| 泡 | 酢のもの、マリネ |
迷ったら、レモンです。 ひと絞りで、たいてい良くなります。
赤ワインにレモンは合いませんが、トマトなら赤の酸を補えます。 トマトソース、生のトマト、ミニトマトを添えるだけでも違います。
ひとつだけ注意があります
入れすぎないでください。
酸や辛みを足しすぎると、今度は料理だけが勝ってしまい、ワインの居場所がなくなります。
- レモンなら、ひと絞り
- 柚子胡椒なら、耳かき1杯
- バルサミコなら、小さじ1/2
ワインに歩み寄ってもらうくらいの量で十分です。 料理でワインをねじ伏せるのではなく、足りないところにそっと足す、という感覚が近いと思います。
まとめ
- 安いワインの「物足りなさ」の正体は、たいてい酸の不足
- 酸は、味の輪郭・後味・脂を流すという3つの仕事をしている
- 果実味は1,000円台でも出るが、酸の設計にはコストがかかる
- 700円でも酸があれば★4、1,200円でも酸がなければ★3
- 足りない酸は、レモンやポン酢やトマトで、料理から足せる
物足りなかったワインを、安いからと決めつけて棚に戻す前に、ぜひ台所のレモンを思い出してください。
ペアリングの考え方そのものについてはワインと料理、何を合わせればいい?にまとめています。