WINE REVIEW
チリワインはなぜ安い?安くてもおいしい理由と、引き換えに失うもの
スーパーの棚に並ぶチリワインは、なぜ1,000円前後でもおいしいのか。関税・気候・地形・畑の広さという4つの理由と、その代わりに失いやすい「酸」の話を、当ブログで実際にレビューした11本の評価をもとに解説します。
スーパーのワイン売り場に行くと、1,000円前後の棚にはたいていチリのワインが並んでいます。
当ブログでも、これまでレビューした59本のうち11本がチリのワインでした。そして、その11本の平均評価は**★3.95**。チリ以外の48本の平均は★3.94です。
値段は安いことが多いのに、評価は他の国とまったく変わりませんでした。
なぜチリのワインは、安くてもちゃんとおいしいのか。そして、その安さと引き換えに何を失いやすいのか。今回はその話です。
理由1. 日本に入ってくるときの関税がかからない
いちばん分かりやすい理由から書きます。
2007年に、日本とチリのあいだで**経済連携協定(EPA)**が発効しました。ワインにかかる関税は少しずつ引き下げられ、2019年にはゼロになっています。
フランスやイタリアのワインも、その後の協定で関税が下がりました。ただチリは、それより10年以上早くから値段の面で有利な立場にいたわけです。その間に、スーパーやコンビニの棚にしっかり場所を確保しました。
理由2. 雨が少なく、晴れの日が多い

チリのワイン産地の多くは、夏に雨がほとんど降らず、日差しが強い気候です。
ぶどうにとって雨は、病気の原因になります。湿気が多いとカビが出やすく、そのぶん農薬や手間がかかります。チリはそもそも病気が出にくいので、育てるコストが低く抑えられます。
そして日差しが強いので、ぶどうがよく熟します。安いワインでも果実味がしっかりしているのは、この気候のおかげです。
理由3. 山と海と砂漠に守られている
チリは、とても特殊な形をした国です。
- 東にはアンデス山脈
- 西には太平洋
- 北にはアタカマ砂漠
- 南には南極に近い氷河地帯
四方を自然の壁に囲まれていて、外から害虫が入りにくい土地です。
19世紀後半、ヨーロッパのぶどう畑はフィロキセラという害虫に壊滅的な被害を受けました。ヨーロッパでは今でも、この虫に強い品種の根に、ワイン用のぶどうを接ぎ木して育てるのが一般的です。
ところがチリには、この害虫がほとんど入ってきませんでした。 だから接ぎ木をしなくても育てられ、その手間とコストがかかりません。
理由4. 広い平地で、たくさん育てられる
チリには、広くて平らな、機械を入れやすい畑がたくさんあります。土地代も人件費も、ヨーロッパの有名産地よりずっと安い。
広い畑で、機械を使って、たくさん育てる。大量に作れるから、1本あたりの値段を下げられます。 スーパーに毎日並べられるだけの量を、安定して出荷できるのはこのためです。
その代わりに、失いやすいもの

ここまで良いことばかり書きましたが、安さには理由があり、その理由には代償があります。
当ブログでチリのワインに★3をつけたのは2本です。
- コノスル カルメネール(約900円)
- コノスル メルロー(約900円)
どちらも理由は同じでした。酸が足りず、アルコールが浮いて感じられる。
これは、さきほどの「安い理由」の裏返しだと考えています。
- 日差しが強い → ぶどうがよく熟す。果実味は増えるが、熟すにつれて酸は落ちていく
- 広い平地でたくさん育てる → 1本の樹にたくさん実をつけるほど、ひと粒ひと粒の味の凝縮感は薄まりやすい
果実味は、日差しさえあれば安くても出せます。でも、それを引き締める酸は、涼しさや手間がないと残りにくい。 1,000円前後のチリワインでいちばん出やすい弱点は、ここにあります。
この「酸の不足」については、そのワイン、薄いんじゃなくて「酸」が足りないのかもで詳しく書きました。
当ブログの11本で見ると
実際の評価の分布はこうなりました。
| 評価 | 本数 | 例 |
|---|---|---|
| ★5 | 1本 | コノスル ピノ・ノワール |
| ★4.5 | 1本 | エスパス リマリ ブリュット |
| ★4 | 7本 | コノスル シャルドネ、アルパカ ロゼほか |
| ★3 | 2本 | カルメネール、メルロー |
11本中9本が★4以上。 大きく外したものはなく、安定しています。これがチリワインのいちばんの強みだと思います。
そして注目してほしいのが★4.5のエスパスです。これはチリ北部のリマリ・ヴァレーという、太平洋からの冷たい風が吹き込む涼しい産地のワインでした。酸がしっかり残っていて、チリらしからぬ引き締まった泡でした。
同じチリでも、涼しい産地を選べば、酸の弱点はかなり避けられます。
安くておいしいチリワインの選び方

ここまでの話を、売り場で使える形にまとめます。
1. 品種名で選ぶ
チリのワインは、ラベルにぶどうの品種名が大きく書かれています。カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノ・ノワール。品種名さえ覚えておけば、だいたいの味が想像できます。 ラベルの読み方はワインのラベルはどこを見る?にまとめました。
2. 涼しい産地の名前を探す
もう一段こだわるなら、ラベルの産地名を見てください。次の名前があれば、海沿いの涼しい産地です。
- リマリ(北部)
- カサブランカ
- サン・アントニオ、レイダ
酸のある、引き締まったワインに出会いやすくなります。とくに白ワインやピノ・ノワールで違いが出ます。
3. 酸が足りなければ、料理で足す
それでも物足りないワインに当たったら、料理の側から酸を足してください。 レモン、ポン酢、トマト、ウスターソース。当ブログの★3の2本も、ピーマンの肉詰めとメンチカツで立て直せました。
まとめ
- チリワインが安いのは、関税・気候・地形・畑の広さの4つが重なっているから
- 日差しのおかげで、安くても果実味がしっかりしている
- その代わりに、酸が足りなくなりやすい
- 当ブログの11本は平均★3.95で、他の国と変わらない。11本中9本が★4以上と安定している
- 迷ったら、品種名で選び、涼しい産地の名前を探し、足りない酸は料理で足す
チリワインは、「安いから」ではなく「安いのに外れにくいから」スーパーの棚の主役になっている、というのが11本を飲んできた実感です。